梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

運動の専門家が子どもたちの成長をスポーツ*子育て*教育など、あらゆる視点から応援します

フィジカルの話でかなり盛り上がりました

昨日はPRO-ATHLETEの面々と様々な話で盛り上がりました。コンタクトの議論ではお互い、大変に白熱しました。

日本人が抱える課題の真っ先に「フィジカル」というワードがありますね。現在行われているラグビー・ワールド・カップでも、日本は自国・アジア史上初の決勝トーナメント進出でベスト8という大躍進をしましたが、当たりに負けないということはどのコンタクト系競技でも常に言われることです。

PRO-ATHLETEのコーチ陣も皆、やっぱりコンタクトだフィジカルだと言います。僕は半分その通りで半分別の事だと認識しています。日本に足らないもの、これから世界と対等に渡り合うために磨いていかないといけないものは、一体何でしょうか。

それはスピードだと考えます。

さらに言うと、日本の一般的体格の選手ではなく「ビッグマンの機敏さ」です。

バスケットボールの世界選手権もラグビーに先がけ今夏に開催され、日本もこれまでよりは大きく力を伸ばしました。それはひとえに海外挑戦組の活躍です。具体的には八村、渡邊、馬場の三選手です。

彼らはフィジカルが持ち味なのでしょうか。もちろん肉体も鍛えているでしょう。それがなければ到底、あのNBAという世界最高峰の舞台で長いキャリアは作れません。

しかしあの選手たちの特徴であり武器は、動きの機敏さです。スピードと言うと単に走る速さだけをイメージしがちなので、あえて機敏さと書きます。動作全体のスムーズさとか巧みさ、反応の良さ、そういうものが掛け合わさって全体の機敏さが生まれます。走るスピードもその一要素ということです。

もう一度ラグビーの話をしましょう。先日の本戦トーナメントの対南アフリカ戦をご覧になった人も多いと思います。日本を圧倒した南ア・チームにどのような能力を感じましたか?

昨晩の話でも、やっぱり日本はもっとフィジカルが必要だよ、と皆言います。でもそれは前任のエディJAPANのときから既にハードに鍛えて上げていたし、そこを解消するために体格の大きな外国出身選手も沢山入れているのではないでしょうか。

本質は、その体格が大きな選手たちの動きが遅く重いということです。南アフリカは190cmを超える選手が前線を躍動的な脚の動きで駆け抜けます。

率直に、速いです。

DFでも、日本の中で最も素早い松島幸太朗選手や福岡堅樹選手が後ろから捕まえられてしまうくらい、動きが機敏です。

日本の大型選手はどうでしょうか。外国出身選手にしても日本の選手にしても、テクニックも含めたスピーディさ機敏さというものが劣っていると、ぼくの目には素直にそう映りました。

(注:ラグビー日本代表の動きが鈍いと言っているのではありませんよ。さらに上位のチームに打ち勝つには、ここからはそれが必要だという意味です)

うちのトレーニング・コーチ陣の一人は「スピードを出す前に捕まってしまうから」と言います。つまりやっぱりコンタクトの強さなんだと。でも、スピードを出す手前で先に捕まえられてしまうのはフィジカルでしょうか。

これをバスケットボールに持ち込むと、DFはドライブの一歩目で體を張りスピードが乗る前に潰すということになりますが、速さのある選手の初速を止めるのは體の強さだと分析しているのであれば、一生コンタクトを強くすることはできないでしょう。

初速に対処する能力は同じく初速の素早さです。スピードで対等にやれるからこそコンタクトを鍛えた成果が発揮されます。南アの大型選手が走れるのと一緒です。動きの機敏さにおいて同じラインに立ってはじめて、コンタクトの勝負ができるのです。

だからラグビーにしろバスケットボールにしろ、ただフィジカルが弱いからもっと體を鍛えて強くする、体格の大きな選手を入れるとやっていても、絶対に──ここはあえて強調しておきましょう──、絶対にコンタクトで勝るようにはなりません。

大きな選手が当たり前に走れて跳べる、ボールも器用に扱えるようにしていくことが、これからの日本の課題であり挑戦だと、トレーニングコーチの端くれとしてそのように考えています。大きい選手こそ走れることが重要です。

(注:日本ではよく大きい選手にガードをさせるとか外回りでシュートを打たせるなんてやっていますが、それでは何も解決しません)

日本の平均身長からすれば180cm以上あれば大きな體となりますが、世界と渡り合うために大型化するのならば、数少ないビッグマンたちを一般的な170cmの選手と同じように機敏に動けるよう育てていく必要があります。

190cm、200cmでも遜色なく身軽に運動を行えるような能力育成のプランをつくること、もしそれが中枢を担う現場で始まるとすれば、日本代表は強くなっていくでしょう。

また最近よく聞く言葉がもう一つ。ぼくはこれが本当の意味で正しい「世界基準」だとも思います。

日本全体で運動能力のスタンダードを上げていきましょう。デカくても動ける、それが答えです。そのためには何をすれば良いかについては、また別の機会で話したいと思います。