梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

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何から鍛えれば良くなるか

 先週、新たにコーチ契約を締結し、第一回目のトレーニング指導をおこなったチームがありました。高校の女子バスケ部とだけ申し上げておきます。

 この日より三週間ほど前に練習見学をさせてもらった際、女子選手特有のもったりとした力の弱い動きと、少しぷにっとした体つきを見て、また練習における選手たちの様子・雰囲気を感じて、どんなことから取り組んでいくことが望ましいか、おおよその見当がつきました。

 その第一回目。セオリーどおりであれば、正しい体の使い方を覚えるためにまず股関節に焦点を当て、その関節可動域つまり柔軟性づくりから始めていくことが原則です。股関節を大きく広げられるようになること、そしてお尻の使い方を練習することが一般的な教科書どおりの進め方となります。

 しかしこのチームはいきなり動きの強い、脚を激しく使ったトレーニングから入りました。その中で、足の踏み方や踏ん張り方、ステップ・スキルなどを鍛練していきます。もうスタートから息があがり、皆ゼーゼーハーハーと肩が上下していました。

 もくろみどおり、彼女たちの眠っていた感覚が体の奥深くからブワッと広がっていくのがわかりました。こういうのはなんという手法か、誰か研究者のつくった専門用語があるのか知りませんが、ストーリーを反対に戻っていくやり方です。逆再生ですね。

 セオリーは、プロローグがあり第一章が始まって、アップダウンさまざま盛り上がり、クライマックスそしてエンディングとなりますね。私もできるならばそれに沿って進めようと心がけます。

 しかし今回の場合はいきなりエンディングから入りました。大トリをどんと持ってきて、最初に話すべきプロローグを一番最後にしたのです。

 私が勝手に都合や気分でそうしたのではなく、練習見学でみえた客観的現実から判断された選択でした。見学時に私が監督さんへ話したことは、

「彼女たちに真っ先に必要なのは、たぶん筋力です。柔らかさとか型とか、お勉強的なものは後回しにしましょう。それよりも体に強い負荷を掛けて基礎筋力を養うことで、すぐに伸びていくはずです。細かい部分に焦点を当てるのは、それが作られた後で良いでしょう」

ということでした。

 あまり個別の内容について具体的に申し上げることはよくありませんが、これは私の判断で皆さまの利益のためにトレーニングコーチの言葉だけお伝え致します。

 がつんと肉体を追い込むのは、手順からすると一番最後の課題です。しかしチーム・選手の現状によって最優先にすべきことは変わり、常に同じではありません。

 半年後とか一年後、複数のチームを見比べたときに同等の成果が出ていたとしても、その鍛練の中身や進め方はまったく異なっていることもあり得ると言うことです。

 それを見抜けるのがコーチの業であるし、また選手本人にも自分をよく知る力や洞察力が必要と言えるでしょう。