梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

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寺子屋

 私のトレーニングでは、上級生が下級生にメニューを教えることになっています。全てではありませんが、たとえば新入生の第一段階メニューは、私が何を言わなくとも先輩があらかじめレクチャーしています。

 私が初めて新入生に会ったときには、必要最低限の下地は出来ているようになっています。早い段階で新入生をちゃんとさせる、適応させるのは、先輩の仕事です。

 チームで必ずマスターすることになっているフットワーク課題なども、私が学年ごとに個別に教えることはありません。しっかり身につけているはずの先輩がアドバイスすることで解決します。

 最近の子供たちは皆とても後輩の面倒見が良く、親切でたくさん声をかけてあげています。しかし私は、あまり手取り足取り手を差しのべてあげることはしないように言います。教え過ぎている選手を見かけた場合には、止めさせることもあります。

 コツをアドバイスすることは構いませんが、過度に至れり尽くせりするのは、教わる側にとって障害となります。物事は唯一、自分の力で掴み取ったものだけが本物の力になります。人に仕込まれた事は本質的な技術力にはなり得ません。

 自分で手本を観察して、感じようとして、何度も反復して、先輩と同じような動きやスピードで着いていけるように自分で力を養っていくのです。そこの要素を取り除いてしまったら、いくら熱心に指導したところで絶対に上達しません。

 だから、先輩が逞しくトレーニングをして、新入生はそれを必死になって着いていく、そのかたちが一番良いのです。手取り足取りレッスンしないで、先輩のかっこいい背中を見せればいいのです。

 人に教わったもの与えられたものは自分の力にはなりません。自ら得ようと動いて掴んだものだけが知恵となり業となるのです。

 真似ぶが学ぶです。先輩が良いお手本を示す、それだけでもう完璧なコーチングだと思います。