梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

運動の専門家が子どもたちの成長をスポーツ*子育て*教育など、あらゆる視点から応援します

幼い日の競争や探究の経験

競争経験のない子は、まず伸びていく力がありません。これは当たらずも遠からずだと思います。競争したことがないと、上達することに興味がないというか、向上というものに意欲を持っていません。いつまでも変わらない子、上達のない子というのはそういう性格である場合が多いんです。とくに現代は。

できる子・伸びていく子なんていうのはほっといていいんです。彼らはコーチの指導ではなく、自身の伸びる力で勝手にどんどん上達していきます。できる子がさらに伸びていくのは、コーチの力ではありません。

皆できる子ばかりを相手にして、指導論だの教育論だの解ったかのようにうんちくをカマし、悟ったように理論講釈を垂れていますが、はじめから勉強意欲のある人間なら伸びていくに決まっています。そんな人間ばかりなら誰だって苦労しない。そういう子だけ視界に入れてコーチしていれば一番楽だし、成功も多いから偉そうなこともたくさん言えるでしょう。

でも日本の学校現場において現実には、意欲を持っている部員よりもそうでない人の方が多かったりするわけですね。バスケットボールで言えばたかだか15人20人くらいの中であってさえ、向上意欲でクラブ活動をやっているわけではない者が何人かいたり、たくさんだったり。それが現実です。

その事実から目を背けてはクラブ活動をしてゆけないのが、ごく一般的な日本の指導者・コーチの置かれた現状なのです。

もっと上手にとか、もっとたくさんの知識を、とか。そういう欲求は幼い頃からの経験で芽生えるわけです。そのひとつが「競争経験」だと、私は考えます。他者との競争、もしくは「今の自分よりさらに」という事も、ある意味競争と言えるでしょう。今を上回ろうとする自分との競争です。

普段の何気ない日常で、優劣のある出来事を経験してきている子供は、競争心や向上心、探究心を持っています。常に知らない何かを求めるような張り合いある生き方であったなら、こうなりたい、これを掴みたい、そういう意欲を持つようになりますね。

でもはじめから完ぺきに与えられ整った環境でボーッと毎日を生き、ただできることを何となくやって過ごしてきただけの子供、生活にそういう要素が多かった子供は、向上意欲がありません。人から劣ることがイヤだとか、もっと力を伸ばしていきたい、新しい事を知りたい、そう欲するようになる要素は自身の日常にあります。

頑張っているけれど、それが身にならない、練習が力として備わっていかない。物覚えが悪い。それはその子供に習得能力が無いのではなく、人生の過ごし方・生き方として、物事を欲して手に入れていくという経験の無さ、意欲や探究心の薄さです。

考えたらこの世の中に、自分の知らないことや出来ないことなど山ほどありますよね。こんなにも新鮮なものがたくさんあるのにそこに興味を示さない、掴もうと欲求しない子供を、今の社会はつくっています。成長しなくても生きていける世の中、頑張らなくても生きていける世の中、ふらふら彷徨っていても生きていける世の中。何もしなくてもいい世の中になりました。紛れもなく私たち大人の責任です。

もっと子供たちの日常を、課題が満載チャレンジでいっぱいの人生にしてあげてはどうでしょうか。今必要なのは与えることではなく、むしろ取り上げることや制限することなのかもしれません。欲しければ自分で掴めと。