梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

運動の専門家が子どもたちの成長をスポーツ*子育て*教育など、あらゆる視点から応援します

シューズの話の続き

前回「シューズ」について、いま近しいコーチ間で話題になっている事を書きました。バスケットボールのシューズは、ものすごく足代わりとしての性能が高くなっていて、それが「足の能力」の発達を阻害しているんじゃないかという話でした。

今の靴は「足 -foot-」の代わりになってくれる、だから足の能力がいらなくなるし発達しない。そして足から伝わる情報が無くなれば、その分の何かの能力も下がる。現代の子供たちの多くが、様々な運動技能を身につけられない大きな原因となっているんじゃないだろうか、と。

具体的にいうと、地面からの情報が体に伝わってこないということは、自分のカラダの外側の世界がどのような状況なのかを運動感覚として認識できないということです(空間認識の能力)。自分と空間との位置関係をうまく把握することができない、それはつまり「どう体勢を取って」とか「どのタイミングで脚を踏んで・一歩を出して」とか、「今はどの程度の力で体を支えているのか」「ボディコンタクトに対してどう力を入れ返すか」「脚と腕との動きの調和(スムーズな全体動作)」などなど、そういうことが解らなくなるということです。

バランス感覚が低い・踏ん張りが弱い・俊敏性がない等といったものについて、単に体幹の筋力が弱いとか、そういうことではなく、根本的に運動感覚を失っているのです。足で大地・地面をしっかりつかむことができないために。

私個人としては、足の指で地面をつかむ力は大切だと考えます。だから本当は、できるだけ素足とかそれに近い状態で練習したり日々生活するのが望ましいんですね。自然と「足の力」が発達します。同時に身体能力の色々な部分がより良く発達していくはずです。他のスポーツなどを考えてみてください。相撲や柔道空手などは裸足、剣道や歌舞伎などの日本舞踊は足袋ですね。新体操も裸足、バレイもほぼ裸足に近い靴、陸上のシューズはより素足に近いものに向かっていて、ボクシングなんかも薄く足袋のような感じです。

なのにバスケットボール競技だけなぜか妙に、シューズがロボット化している気がします。1つの競技で、こんなに色々と好きな機能性や形の靴を使用することが認められているのは珍しいです。他のスポーツではほぼ見られないことです。靴の規定がないというか、あまり重視されず私たち当事者たちの統一性もない。バスケットボールは靴の制服がないんですね。だからそこに思いっきりビジネスが入り込んで、どんどんロボット化しています。それが人間の足の能力を奪っています。私が子供の時代には、NBA人気でバッシュがブランド化されて「ミドルカット」が作られ始めてから、急激に捻挫が増えたと言われていました。

いま、素足と変わらないような足のカタチそのままのシューズなどが売られていますね、五本指の。ランニングしたり山を登ったりする人たちの一部の層で流行っていますよね。ああいうようなモノも、この話に繋がってくるんじゃないでしょうか。

私はローカットで薄い皮のシューズをお勧めします。ずっとハイパーなロボット靴に慣れてきている人は、きっと初めはすぐケガをするでしょう。捻挫などが続出すると思います。仕方ありません、それだけ「足」の能力が無いんですから。それを乗り越えて慣れてきたとき、徐々に足の能力も発達してきたという証だと思います。そこからはボディバランス、ステップワーク、コンタクトといった運動技能がグッと伸びていく段階だと思います。

ちなみに親指の力をつけるには、下駄とか草履を履くといいですね。歩く際に「鼻緒」を親指で自然と握ろうとしますので、これで登り坂や下り坂を行こうものなら最高に指を使います。靴底もほとんどストッパーになる構造がありません。足袋のようなものもそうですね。なのでなかなか下駄は無理ですが、靴下を足袋のような二本指のものにしたり五本指にしたり、そういうところから少しずつやっていくのもイイと思います。ぜひお試し下さい。

足の指にまつわる話でした。