梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

運動の専門家が子どもたちの成長をスポーツ*子育て*教育など、あらゆる視点から応援します

教えてもらった方法と自分の得意な方法が合わないのですが・・・・と質問がありました

 先日、一人の選手からこのような質問を受けました。

 

「ジャンプの動きで、練習のときには梅原さんにもっと勢いよく跳んで、跳ね返る力を使うよう言われたんですが、僕はどちらかというとゆっくり踏み込んだほうが高く跳べます。どうすれば良いでしょうか?」

 

 ジャンプの練習をしていたんですね。跳び方のスキルを選手たちに教えていました。

 そこで僕が教えたジャンプの方法と、彼の実感している高さを出す跳び方が違っていたわけです。

 それで疑問に思ったというよりも迷って、彼は僕に聞いてきたんです。

 運動を学ぶときに、このようなことはたくさんあります。皆さんも経験があるはずです。

 スポーツ以外でも、教わったことが自分のいま上手くいっているものと異なる場合ってありますよね。

 その場合に、さらに自分を飛躍させるほうへ舵を取れる人の考え方というものがあります。

 彼はそのスタートラインにいま、立ちました。

 

▽literacyを身につける

 これは情報の使い方の勝負です。

 情報は知識になり、知識が実践によって見識になります。良い経験によって知恵もつきます。

 これらを【リテラシー literacy】と言います。

 持っている情報をいかにうまく活用するか、それが物事の成功へとまっすぐに繋がります。

 あるひとつの方法論を探った際に、Aの手段とBの手段があったとします。

 ふたつはまったく違った方法です。

 それを二者択一で正解を見つけようと考える人がいて、両方とも含めていいとこ取りをしようとする人もいます。

 さてこの場合、成功するのはどちらの人でしょうか?

 

▽会議はなぜいつも長引くのか

 ちょっと例を出します。

 もしあなたが会社にお勤めの方だとしたら、きっと毎日会議に参加していると思います。

 もし学校へ通われている生徒さんだったなら、行事などについてクラスで話し合いをすることってありますよね。

 その会議って、ものすごく退屈じゃありませんか?

 どうしてかって言ったら、話し合いの中身がまったく進展しないからです。

 なぜ進まないのかというと、Aの意見とBの意見、もしくはもっと多くの意見つまり「私はこっちが良いと思います」という色んな私見が混在するためです。

 でも意見があるのは良いことですよね。

 それ自体はむしろ有意義なもので、問題は皆自分の意見を通したいが為に他を否定してしまうところにあります。

 大方が対立する格好になってしまって、お互いを拒否します。

 答えはどれかひとつ、採用は一本のみっていうのが日本社会のスタイルなのです。

 

▽議論が深まらない理由

 意見を対極において闘わせるのが日本式の物事の決め方です。つねにおなじ一直線上にあります。

 これまでの方法があり、それと違う方法が提案されたとき、これまでのものが排除されるという印象が僕たちにはありませんか。

 だから日本では議論が先へ伸びていきません。問題を解決する方法がいっこうに定まらない。

 大抵が「問題が持ち上がった!」と頭を抱えながらも、「じゃあこうしていきましょう」という建設的な方法を示すと「いやそれはちょっと・・・」と及び腰になり、新しい手段を嫌がる人が多いのです。

 今まではAの方法でやってきて、でもそれでは立ち行かない情況になり問題も起きてしまいました。

 問題を解決するためには新しいBやCの方法が必要ですが、馴染んでいるAを変えることに不安や面倒が予測されてしまって、強い抵抗感が生まれます。

 物事を前へ進められない人は、策が出ないんじゃなくて踏み出せないっていうのが大半です。

 その根っこには、物事をすべて一直線上において対立構造をつくる体質が自らの足を引っ張っているのです。

 そのために物事の正解はひとつだけ、答えはひとつとする考え方も強固にこびり付いています。

 

▽どちらも活かす

 僕は質問をくれたそのアクションだけでも素晴らしい彼に、

 

「自分の得意としているいまの動きは良いものだから、もっと鍛えて伸ばしていこう。得意を伸ばしながら、今日はじめて練習した新たな方法も取り入れて技量の幅を広くしていけば良いと思う」

 

 そう言いました。

 どちらが正解でどちらが間違いという思考では、つねにキャパシティがひとつの枠しかありません。

 正解がひとつ入るとそれ以外はすべて間違いとなり、せっかくの学ぶ機会が台無しになってしまいます。

 それでは世に無数に転がっている情報を、まるで活かすことができません。

 literacyの能力を高める人は、すべての良いものを取り入れます。

 AかBかじゃなく、Aの良いところとBの良いところという見方をします。

 つまり二者択一で正解をひとつ決めるのではなくて、すべてを吸収してその良い面を残し不要な面を削るという方法で自分を伸ばしていくのです。

 

▽ぜんぶ繋がっています

 以前に脳のスケールって話をしたと思います。

 正解がひとつの発想を続けている人は、いつまでも自分の可能性がひとつです。

 これからの成長を、そのたったひとつにすべて預けることになります。

 本当はいろんな経験をしていろんな情報を得て日々逞しく育っているはずなのに、答えはひとつという思い込みがこびり付いているせいで、脳はつねにそのスケールのままです。

 それは発想も価値観も貧しいと、あえて厳しい言葉で書きます。そういう感覚である人は貧しい。

 自分の良い面を大切にして、さらに新しいものをどんどん学んでください。

 勉強とは良い情報を知ることであり増やすことです。マルバツに振り分けることでは、断じてありません。

 

 脳のスケールの話、自己教育の話、子どもは皆天才の話、そして今日の質問の話と、すべては繋がっていることを感じていただけたら幸いです。