梅原淳の心*體みなぎるエッセイ/Playground Heroes

運動の専門家が子どもたちの成長をスポーツ*子育て*教育など、あらゆる視点から応援します

ちょっとした心の違いでスゴいことが起きるんです

 東京の高校バスケ部から嬉しい報告をもらいました。
 新人大会のブロック予選にて、4回戦を突破して年明けの都大会出場権を取りました。
 たしか新人都大会は初出場のはずです。
 コロナで崩壊しかけた選手の心に、気合を入れ直そうとしている矢先でした。

▼崩壊寸前であったOBたちの魂
 学校の取り決めで部活をいつまでも再開させてもらえず、9月過ぎからようやく厳密な時間制限を約束として全体練習を許可してもらえました。
 じつに半年以上。
 失ったのは時間よりも、部活動への意欲です。
 バスケットボール技術を磨き、試合で順位を伸ばすことに気持ちを入れて頑張ってきたチームの背骨が、がらがらと崩れ落ちる寸前だと監督から聞いていました。
 何年も掛けて培ってきた、周囲からも評価されているチームの存在意義を、もう少し長引いたら修復不能になるところでギリギリ再スタートできました。

 東京でもウィンターカップ予選は開かれましたが、当然3年生はいなくなり、部の様子を知らない新入生と、半年間も部活をせずポカンと穴が空いた2年生で練習するのです。
 これまでの心も雰囲気も態度も、何もかも変わってしまいました。
 監督の献身で、このまま終わっちゃいけないからもう一回我がチームたる所以を取り戻そうと、選手に話し再生を誓いました。

 ありのままに言って、運動の得意な子は本人たちの自意識ですら一人もいません。
 本当にひたすら努力ひとつで、いつも4回戦まで上がっていました。
 僕はそれでもたいしたもんだと、心底では思っていました。
 彼らがそこまで行けるなら、もう充分な成績です。
 なんとかその「頑張れるチーム精神」の灯だけは絶やしちゃいけないと、「全員成長!」で僕もささやかに彼らを鼓舞しました。

▼ある話をひとつ思い出しました
 マラソンの故小出監督がこんな話をしています。
 シドニー五輪で金メダルを取った高橋尚子選手を、自身の率いる積水化学に入れる際、「Qちゃんを入れるのはためらったんですよ。実績もないし、大学を出ていて年を取っていたから」と。
 それでも高橋選手の「走りたい、そのためならお給料もいらない」という健気さに心動かされ、入社を受け入れたそうです。

 もう一人のオリンピックメダリスト、バルセロナ五輪で銀、アトランタ五輪で銅を取った有森裕子選手も、生まれつきの股関節脱臼、さらに幼少期の交通事故の後遺症でうまく走れない。
 でも何度も電話を掛けてきて入門を請う熱意に負けて、「マネジャー候補」として入社させました。
 入社後、毎日チームの一番後ろを走っていた有森選手があるとき、「監督、私をオリンピックに連れて行ってください。そのためだったらどんな練習にも耐えます。ほかの人が1時間練習するなら、私は2時間がんばれます」と直談判したんだそうです。

 小出さんは、これらの監督人生で得た実感をこう振り返ります。

「勧誘した子は強くならなかった。一銭もかけなかったのが強くなっている。要するに、志の差ですよ」

 それをいま僕たちの立っている場所で実現したのが、A高キセキの都大会出場です。
 本当に信じられない。
 時間の問題ではなく、頑張れば、心さえ変われば行動が変わり結果が変わる。
 それを彼らは証明したのかもしれません。
 次も勝ってほしいと心から願います。